業績評価指標

業績評価指標とは、組織や人を評価する際に用いる指標である。たとえば、営業部門は売上高、製造部門は製造原価、事業部は営業利益率でそれぞれ評価というような具合だ。

業績評価指標は採点基準として機能する。たとえば、営業部門の業績評価指標が売上高ということは、「費用でも利益でもなく、他ならぬ売上高で評価する」ということを意味するからだ。

ここに重要なポイントがある。それは、人は採点基準通りに行動するということだ。

たとえば、柔道で投げられた選手が意地でも背中を床に付けないようにするのは、背中がどれだけきれいに床に付いたかどうかで「一本」、「技あり」が決まるという採点基準になっているからだ。中には、背中を床に付けたくないがために、顔面から落ちる選手もいる。そして、顔から血を流しながら「勝った」と得意気になっている。

しかし、これは非常におかしなことだ。なぜならば、本来は命を懸けた戦いである格闘技において、自ら頭部から落ちるなど、もってのほかだからだ。頭部は一番守らなければならない部位なのである。

ちょっと考えれば、いかにおかしいかが誰にでも分かることでも、採点基準がそうなっていないと、簡単にそのおかしな行動を取るのだ。人は、かくも採点基準通りに行動するものなのである。

残業がなかなか減らない原因も、残業代を支給するというルールにその一端がある。残業代を支給するというのは、いわば「短期的な経済的報酬は時間だけで評価します」という採点基準だ。そうなっていれば、ダラダラと仕事をするのは当然だ。その方がお金がもらえるからだ。いくら「残業は減らしましょう」などと言われても、心の底から「残業を減らそう」と思うわけがない。

これが年俸制になれば、話はガラリと変わる。どんなに長時間働いても、給料には関係ないからだ。そうであれば、皆、早く仕事を片付けて帰ろうとする。結果的に、生産性も格段に上がることが多い。

人は採点基準通りに行動するのだ。ということは、採点基準たる業績評価指標の選定の仕方で、人の行動、組織の行動は、ほぼ決定的に決まるということなのである。