取得原価主義

取得原価主義は貸借対照表に関する原理原則の1つだ。単に、原価主義ともいう。

取得原価主義は資産の計上額を規定する原則である。具体的には以下の2つの原則からなる。

  1. 貸借対照表へ計上額は、取得時の支出額に基づき決定する
  2. 保有中は、時価の変動があっても評価換えしない

1.の原則は、第三者に支払った現金の額という客観的事実に基づき計上額を決めるということである。第三者との取引事実に基づく金額なので、この金額は一意に決まる。

2.の原則は、一度計上したら、その額のまま未来永劫ずっとそのままということである。企業が永らく保有していた土地を売却したときなどに、「帳簿価額数千万円、売却価額数億円」などということをニュースで聞くことがある。このようなことが起こるのは取得原価主義だからである。

数億円で売れるものをいつまでも数千万円で計上し続けるのはいかがなものかという考えもあろうが、いくらで売れるのかは売ってみなければ分からない。それを事前に知ろうとしたら主観や見積もりが入ってしまう。取得原価主義であれば、そのような主観や見積もりが入る余地はないので、客観性という点では取得原価が勝っている。

有価証券、棚卸資産、固定資産などの資産の取得原価の計算は一般に以下のように計算する。

取得原価=購入代価+付随費用

付随費用とは、取得の際にかかった手数料や、運搬費、据付費などのことである。取得原価に含めるのはその資産の購入代価だけではなく、付随費用も含めるところが取得原価算定のポイントである。 このように計算する理由は、取得原価とは「その資産を使えるようにするまでにかかった支出」だからだ。