原価、コスト、費用

「原価」という言葉がある。「費用」という言葉もある。「コスト」という言葉もよく使われる。それぞれ何が違うのだろうか。

これらの言葉は、実務上それほど厳密に使い分けられているわけでないが、ちゃんと説明すれば以下のようになる。

「費用」というのは、損益計算書(P/L)におけるマイナスの総称だ。経済的犠牲全般を指す言葉なので、3つの言葉の中では最も広い概念である。

「原価」は費用の一種だ。その定義は、製造原価などの算定の拠り所とされている『原価計算基準』に求めることができる。同基準には、「原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、把握された財貨又は用役の消費を、貨幣価値的に表したものである。」という定義がある。

制度の常で、何を言っているのかよく分からない言い回しだが、ポイントは、「経営における一定の給付にかかわらせて把握された消費」というところだ。「経営における一定の給付」とは、会社が販売する商品や製品のことだ。それに「かかわらせて把握された消費」ということは、商品や製品に直接的に紐付けて把握できる経済的消費ということである。

これは、売上高の元となる費用といってもいい。具体的には、製造業であれば製造原価であり、小売業であれば売上原価だ。いずれも「原価」という言葉が付いているが、逆に言えば「原価」という言葉が使われるのはこれだけだ。

「原価」を英語で言ったのが「コスト」だ。「コスト削減」などと言うように、「コスト」という言葉は費用全般の意味で使われることも多いが、本来は原価だけを指す言葉だ。

全般的な費用は英語ではexpenseという。たとえば、「販売費及び一般管理費(販管費)」は、英語では「Selling, general and administrative expense」(略してSGA)という。ただ、「Selling, general and administrative cost」と表記する場合もあるので、この辺の言葉遣いは日米問わず結構いい加減ではある。

無理に「原価」を分離把握することにあまり意味のない場合もある。たとえば、サービス業では販売対象物であるサービスの原価を特定するのは困難なので、最初から原価を分離把握することをせず、売上原価と販管費をまとめて「営業費用」としている企業もある。