財務会計

単に「会計」と言った場合、一般的にそれは「財務会計」を意味している。それほどまでに財務会計は会計の中でも中心的な存在であり、財務会計に基づく決算書の利益を増やそうと皆仕事をしているはずだ。

ところで、なぜ、利益が出たらみなさんは喜ぶのだろうか?利益が出たら、働いているみなさんの懐は潤うのだろうか?

残念ながら、利益が出てもみなさんの懐は基本的には潤わない。制度上の利益はそういうものではないからだ。

制度上の利益の意味は2つしかない。それは税額計算の基準値と、配当計算の基準値という2つだ。つまり、利益の行き先は国・地方自治体と株主だけということだ。その支払額を計算させるために、制度はすべての会社に利益を計算させているのである。

財務会計の起源は大航海時代にまで遡る。当時は貴族がお金を出し、そのお金で船と船員を調達して航海に出る。目的は、いろいろなところで商いをして、貴族に金銀財宝を持ち帰ってくることだ。一航海が終わって港に戻ってくれば、金銀財宝は貴族で山分けだ。

ところが、ひとたび港を出てしまえば乗組員たちは目の届かないところに行ってしまう。もしかしたら乗組員たちは寄る港ごとに酒を買いあさり、ギャンブルに明け暮れているかもしれない。

それでは困るので、金の動きをすべて記録させ、港に戻ってきたらその記録内容を報告させるようにした。これが財務会計の始まりだ。

現在に置き換えれば、貴族が株主、船長が社長、乗組員が従業員、航海期間が会計期間だ。帰港してからの貴族への報告は定時株主総会における決算報告だ。株主総会のメインイベントは、貴族間で山分けする金銀財宝がいくらか確定することだ。それはすなわち、配当に対する株主からの承認である。 財務会計とは、港で待っている貴族のための会計なのである。