指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、監査役会を置かず、その代わりに指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を置く会社形態である(下図)。

従来は「委員会設置会社」と呼ばれていたが、2014年改正会社法(2015年4月1日施行)から「監査等委員会設置会社」という別のタイプの委員会設置会社が新設されたことに伴い、指名委員会等設置会社という名称に変更された。2003年4月施行の商法から可能になった比較的新しい機関のあり方である(当初は「委員会等設置会社」と言われていた。)

指名委員会等設置会社では執行役を設置しなければならないのも特徴だ。経営の執行は執行役が行う。代表権も執行役が持つ。

指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任・解任の内容を決定する。実質的に、取締役の人事権を握っていると言っていい。監査委員会は、執行役の職務執行の監査を行う。監査役会設置会社における監査役会に相当すると言える。報酬委員会は執行役等個々の報酬を決定する。報酬を自ら決めるとお手盛りになる危険性があるので、そこにも客観性を持たせているのだ。

3委員会はすべて取締役から成り、かつ、すべての委員会とも過半数は社外取締役でなければならない。このような形態によって、経営執行と監視・監督の明確な機能分化を図っているのである。これは、取締役が本来の「取り締まる役」に徹する米国流の機関設計である。

ただし、現行法では執行役と取締役の兼務が認められており、骨抜きにされている感がある。2015年に不正会計が発覚した東芝は、当時、日本では数少ない指名委員会等設置会社を採用しており、「ガバナンスの優等生」と言われていた。それでも不正会計が起きたのは、当時の東芝において、ほとんどの執行役が取締役と兼務だったことと無縁ではないだろう。

執行役と似て非なるものに執行役員がある。執行役員は、経営執行と監視・監督機能を明確に分離する米国流の機関設計がまだ認められていなかった1997年に、ソニーがそれを疑似的に実現するために設けたのが始まりである。以来、多くの企業が執行役員という役職を置いている。 しかし、執行役員は法的には役員ではない。会社が任意に設けた役職である。したがって、株主代表訴訟の対象になることもない。執行役は法的な役員なので、株主代表訴訟の対象になる。