重要性の原則

重要性の原則は、会計基準の根底に流れる原理原則の1つである。

重要性の原則とは、会計情報の利用者が企業の状況を判断する上で乗用性に乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで、他の簡便的な方法に従った処理を容認するものである。

会計は、本来、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものである。しかし、完全無欠の財務諸表を作成することが求められているわけではない。財務諸表を作成する目的は、各種ステークホルダーが企業の状況に関する判断を誤らせないようにすることであるから、財務諸表が全体として企業の経済的実態を描写していればいいのである。それが達成される限りにおいては、あまり細かいことにまでこだわらなくてよいということである。

重要性の判断には、質的重要性と量的重要性がある。また、会計処理と表示の両面に適用し得る。

会計処理の例としては、たとえば以下のようなことが認められている。

  • 消耗品等の少額資産のうち、重要性の乏しいものは購入時に全額費用として処理することができる。
  • 引当金のうち、重要性の乏しいものは計上しないことができる。
  • 棚卸資産の取得にかかる付随費用のうち、重要性の乏しいものは取得原価に算入しないことができる。

表示面については、たとえば以下のようなことが認められている。

  • 有価証券報告書における財務諸表は、100万円未満を切り捨てて表示する。
  • 金額が大きな科目は他の科目と区別して記載することが求められる一方で、金額が小さい科目は、性質が特に重要でない限り、他の科目に含めて記載することができる。

重要性の原則は、会計業務を必要以上に複雑・煩雑にしないためにも、実務上重要原則である。IFRS(国際会計基準)にも同様の考え方がある。