認識、測定

会計基準や会計の書籍を読んでいると、「認識」と「測定」という言葉がよく出てくる。いずれも日本語としては普通の言葉なので何となく分かった気になるかもしれないが、実は「認識」も「測定」も立派な会計専門用語なのだ。

「認識」(recognition)とは、「会計帳簿に計上すること」だ。「測定」(measurement)とは、「会計帳簿に計上する金額を特定すること」だ。

「認識」に関して問題になるのは、計上のタイミングだ。

たとえば、IFRSには「収益の認識」という言い方が出てくる。これは原語では「Revenue Recognition」だ。revenueは収益(income)の中でも本業に関わるものだから、要するに売上高のことだ。したがって、IFRSにおける「収益の認識」とは「売上高計上基準」のことを言っている。そこで問題になるのは、売上高を認識(=計上)するのは出荷時なのか、着荷時なのは、検収時なのかというタイミングである。

「金融資産の発生の認識」「金融資産の消滅の認識」という表現もある。堅苦しく言っているが、要するに「金融資産を帳簿に計上するタイミング」「金融資産を帳簿から落とすタイミング」の話だ。たとえば、有価証券の認識(=計上)であれば、かつては引き渡し時だったものが約定時になったというようなことが論点になる。ここでの論点も、やはりタイミングだ。

一方、「測定」に関して問題になるのは、金額の評価方法だ。

たとえばIFRSでは、有価証券や棚卸資産、固定資産などに関して「認識時の測定」という表現が出てくる。これは「最初に計上するときの金額の特定」ということだから、「取得原価の算定」ということだ。そこでは、取得原価に含める支出の範囲などが論点になる。

では、「認識後の測定」と言ったら、どういう意味になるだろうか。これは「計上後の金額の特定」ということだから、評価替えのことを言っている。具体的には、時価による評価替えや減損などのことだ。減価償却も、簿価を変動させるという意味で「認識後の測定」の一種である。

これらの言葉は一般的な日常用語であるだけに、一度どこかできっちり押さえておかないと、その本当の意味はなかなか分からない言葉だろう。