株式移転

株式移転とは、新設会社がその株式を対価として他社の株式を取得する方法である。自社の株式を対価として他社の株式を取得する点で株式交換と同様であるが、株式移転は100%親会社(これを「完全親会社」という。)を新設するためのスキームである。持株会社(ホールディング・カンパニー)を作る際によく用いられるスキームである。

具体的に見て行こう。下図において、A社とB社の完全親会社P社を新設するとしよう。新設されたP社は、A社とB社の既存株主全員からその株式を取得し、対価として自社株式を発行して交付する。結果的に、A社とB社はP社の完全子会社となり、A社とB社の元の株主は全員P社の株主となる。これで、完全親会社P社のできあがりである。

A社株主とB社株主のそれぞれにP社株式を何株ずつ割り当てるかは、A社株式とB社株式の価値の比率で決まる。考え方は合併の場合と同様である。

この場合に重要な意味を持つのは、割り当てられるP社株式数の相対的比率である。絶対数は重要な意味を持たない。なぜならば、重要なのはP社に対する相対的な持分だけだからである。割り当てられる株式がそれぞれ10株と20株の場合も、100株と200株の場合も、P社における株主としての立場に変わりはない。

株式移転を行うためには、A社、B社において株主総会特別決議が必要である。全株主の同意がなくても完全親子関係を作れるという点で、株式交換同様、画期的である。