株式交換

株式交換とは、株式を取得する際に、現金を対価として支払うのではなく、自社株式を交付する方法である。やっていることの本質は単なる株式取得である。ただし、株式交換は全株式を取得する場合にしか使えないので、キャッシュレスで100%子会社(これを「完全子会社」という。)を作るためのスキームといえる。

具体的に見て行こう。下図において、A社がB社を完全子会社にするとしよう。そのためには、A社はB社の全株主からB社の株式を取得する必要がある。その際に、A社は対価としてB社株主に現金を支払う代わりに、自社株式を新規に発行してB社株主に付与する。この結果、B社はA社の完全子会社となり、元のB社株主はすべてA社の株主となる。

B社株主に付与するA社の株式数は、それぞれの株式の価値によって決まる。たとえば、A社株式が200円、B社株式の価値が100円だとしたら、B社株式2株に対してA社株式1株を交換する。この交換比率の考え方は、合併の場合と同様である。

株式交換を行うためには、A社、B社ともに株主総会特別決議が必要である。特別決議とは、出席株主の3分の2以上の賛成によって可決される決議である。出席株主の過半数の賛成で足りる普通決議よりはハードルが高められているが、むしろ3分の2の賛成で足りるところが画期的なところだ。

完全子会社化するためには、通常はB社の全株主の同意を取り付けなければ実現できない。株式の譲渡は当事者間の合意がなければ成り立たないからだ。ところが、B社においても株主総会特別決議で足りるということは、全株主が賛成しなくても強制的に完全子会社にすることが可能ということだ。

決議に反対した株主には、救済措置として、会社に対して株式の買い取りを請求できる権利(株式買取請求権)が認められている。