株式交付

2019年改正会社法(2021年3月1日施行)において新たに可能となったスキームである。

株式交付は、株式会社が他の株式会社をその子会社とするために、当該他の会社の株式を譲り受け、対価として自社の株式を交付することをいう。

自社株式を対価として他の会社を子会社化する点で、基本的には株式交換と同じである。ただし、株式交換は全株式を取得して100%子会社(完全子会社)を作る場合にしか使えない。したがって、100%子会社化する場合以外で、自社株式を対価として子会社化したければ、従来は自社株式を現物出資するという方法によるしかなかった。しかし、現物出資は裁判所選定の検査役を選任しなければならない等、何かと面倒な手続きが必要になる。そこで、株式交換と同程度の手続きで、自社株式を対価として子会社化すること可能にしたのが、この株式交付である。いわば、「部分的な株式交換」である。

ここでいう「子会社」は議決権割合が過半数となる場合に限る。また、新たに子会社化する場合に限られるので、既に子会社である株式の議決権を追加取得する場合になどには使えない。

手続としては、取得側の会社において株主総会決議を必要とするが、被取得側の会社では、全株式が強制的に取得されるわけではないことから、株主総会決議は不要とされている。