VBM(Value Based Management)とは、企業価値(Enterprise Value)の増大を目的とするマネジメントの考え方のことである。具体的には、企業価値をそれに影響を与える要因にブレークダウンし、それぞれの要因を改善することによって、結果的に企業価値の増大を達成しようという考え方だ。ブレークダウンされた個々の要因をバリュー・ドライバという。
企業価値は、将来フリー・キャッシュ・フローを加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた正味現在価値として計算する。式で表せば、以下のようになる。
\begin{array}{c}
\mathrm{企業価値} = \displaystyle \sum_{i}^{\infty} \dfrac{FCF_{i}}{(1 + \mathrm{WACC})^{i}} \\
FCF_{i} \colon \mathrm{当該企業の}i\mathrm{年後のフリー・キャッシュ・フロー}
\end{array}
これを元にバリュー・ドライバにブレークダウンすれば、たとえば下図のようになる。
何をバリュー・ドライバとするかは各企業の考え方によるので、他のバリュー・ドライバも当然あり得る。また、上図は財務的なバリュー・ドライバへの展開にとどまっているが、ここからさらに業務に即した非財務的なバリュー・ドライバへ展開することが重要だ。そこまで展開して初めて、各部門で働く人々が何をすべきかが明確になるからだ。
企業価値の「価値」は株主にとっての価値だ。その増大を最上位の命題に据えるVBMは、株主を最も重視する経営手法といえる。
ステークホルダーの中で、株主を最も重視するという考え方には必ずしも賛同しないかもしれない。株主よりも顧客、あるいは従業員を重視するという考え方もあるだろう。そのような企業にとってもVBMは無用ではない。上図から分かるように、バリュー・ドライバは、P/LとB/Sの双方に関わる項目から成長率やリスクにまで多岐に渡っている。つまり、企業価値の増大を最上位の命題に据えることによって、企業をバランスよく改善するという効用がVBMにはあるのだ。