債務超過

貸借対照表の資産よりも負債の方が上回っている状態を債務超過という。厳密には「債務」と「負債」は同じものではないが、「債務超過」という場合の「債務」は「負債」のことを指している。

資産を負債が上回るので、純資産はマイナスになる。そのような状態になる典型的な原因は赤字だ。赤字を出すと、利益の代わりに損失が純資産に蓄積していく。いわゆる累積損失だ。それが繰り返されると、遂には純資産全体がマイナスになる。巨額の赤字を出した場合は、たった1年で純資産がマイナスになり、債務超過に陥ることもある。

債務超過の意味は、資産のすべてを換金できたしても、現在負っている支払義務のすべてを履行できない状態ということだ。個人で言えば、持ち家の資産価値よりも住宅ローンの方が上回っているような状態だ。

すべての支払義務を履行できない状態なので、債務超過は実質的な経営破綻状態とみなされる。

ただし、債務超過になったらからといって、そのこと自体で何かが起こるわけではない。通常業務は従来通り続けられる。個人の生活で考えてみても、持ち家の資産価値よりも住宅ローンの方が上回っていることはいくらでもあり得るが、そのことをもって日々の生活にすぐに何らかの支障が出るわけではないのと同じだ。

では、債務超過になると具体的にどうなるのか。

まず、企業の信用ランクが落ちる。信用ランクが落ちれば、銀行からの新規借り入れはまず不可能になる。それどころか、既存融資を引き上げられることも十分に考えられる。支払義務を履行できない状態に陥っているわけだから、お金のあるうちに我先にと資金の返済を求めるのは当然だ。

さらに、上場企業の場合は、1年以内に債務超過を解消できないと上場廃止になる。上場廃止になれば証券市場からの資金調達の道も絶たれる。

ただでさえ業績が悪くて資金繰りが悪化しているところに、資金調達の道もすべなくなるわけだから、これで本当に資金がショートして破綻する可能性が高まるわけだ。

なお、上場廃止の判断で使われる債務超過は、一般的な意味とは異なる日本独自の債務超過が使われる。