耐用年数、残存価額、償却方法

減価償却を行うためには、耐用年数、残存価額、償却方法の3つを決める必要がある。これらは減価償却の基本的3要素といえる。

耐用年数とは、その固定資産が使用できると見込まれる期間である。減価償却は耐用年数にわたって行うので、耐用年数は償却期間といわれることもある。

残存価額とは、耐用年数経過後における固定資産の経済的価値である。たとえば、自動車は耐用年数経過後であっても、一定の金額で売れるのが普通である。そのときの売却価額が残存価額である。このように中古市場が確立しているような資産の場合は残存価額を見込めるが、そのようなケースは少ないだろう。したがって、現実的な残存価額は多くの場合0である。むしろ、引き取りや廃棄のために費用がかかることさえ現実的にはある。

償却方法とは、減価償却費の計算方法である。定額法、定率法、級数法、生産高比例法などの方法があるが、圧倒的多数の企業が採用しているのは定額法と定率法である。

減価償却を行うことには理論的根拠があるが、本音を言えば、要するに各期の利益を平準化させたいのである。キャッシュの動き通りに計上すると、支出年度の費用はかなり大きくなる一方、それ以降は費用が全く計上されないことになる。これでは、利益という情報が年によって大きく変動してしまう。利益は、税金や配当計算のための基準値であるので、配当を受け取る株主、そして何と言っても税収を財源とする国・地方自治体にとっては、年による大きな変動は好ましくない。

このような本音があるため、減価償却は税法の規定に多分に影響を受けるのである。税法は、固定資産の種類ごとに細かく耐用年数(法定耐用年数)を定め、残存価額は0とし、資産の種類によっては特定の償却方法(法定償却方法)しか認めていない。

誤解している方が少なくないかもしれないが、上記の話は税務上の話であって、会計上は3要素のすべてについて会社が独自に決めていい。税務上の定めと相違があれば、税務調整において修正すればいいだけである。ただ、それが面倒なので、圧倒的多数の企業が税務上の定めのまま減価償却をしているのである。