監査役

監査役は、取締役の職務執行を監視監督する株式会社機関である。取締役を監視監督する役割は取締役(=取り締まる役)にあるので、監査役は必ずしも設置する必要はない。

公開大会社(→公開会社大会社)に限って言えば、監査役を設置しない場合は指名委員会等設置会社監査等委員会設置会社の選択しかない。また、公開大会社においては3人以上から成る監査役会を設置しなければならず、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない(常勤監査役が1名以上必要)。

監査役を設置するのはドイツ型である。アメリカ型の機関には監査役はなく、取締役がすべて監視監督の役割を担う。アメリカ型を参考にした日本の機関設計が指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社である。

監査役の監査には取締役の業務監査(=プロセスのチェック)と会計監査(=結果としての情報の監査)が含まれる。ただし、公開会社でない会社(非公開会社)であって、かつ、監査役会・会計監査人を設置していない会社においては、定款で定めることによって監査役の権限を会計監査に限定することもできる。これは、会社法の前の商法時代に、小会社(→大会社)の監査役の権限が会計監査に限定されていた名残である。

会計監査人設置会社、すなわち監査法人の監査を受けている会社では、会計監査については監査役は会計監査人の監査を追認することで足りるとされている。

監査役の監査の性格は適法性監査であって、妥当性監査ではないというのが有力説となっている。すなわち、取締役の行為が妥当かどうかは取締役の裁量(経営判断)の問題であって、監査役は介入すべきではないということである。