キャッシュ・フロー計算書

利益は損益計算書において以下のように計算される。

                        収益-費用=利益 ・・・①

一方、キャッシュの出入りはそれぞれ収入、支出といい、その差額を収支という。式で書けば以下の通りである(「収益」「費用」「収入」「支出」についてはこちら)。

                        収入-支出=収支 ・・・②

ここで、収益≠収入であり、費用≠支出である。すなわち、キャッシュをもらったときに収益を計上するわけでもなければ、キャッシュを払ったときに費用を計上するわけでもない。収益≠収入、費用≠支出ということは利益≠収支ということだ。すなわち、利益が計上されているからといってキャッシュがあるとは限らないということである。利益が黒字でも、キャッシュがなくなれば倒産だ。いわゆる「黒字倒産」である。

利益と収支に食い違いがある原因はいくつかある。

最大の原因は発生主義だ。発生主義は、収益と費用の計上をキャッシュの動きから意図的に切り離す。そうした方が企業の経済的実態を忠実かつタイムリーに記録できるからである。

費用収益対応原則も利益と収支にギャップをもたらす。代金の支払いが済んでいる商品であっても、売れ残れば棚卸資産になってしまい、売上原価という費用にならないからだ。

減価償却費引当金も費用も利益と収支のギャップを生み出す。これらの費用はそもそもキャッシュの動きと切り離されているからだ。

これだけギャップがあると、利益をいくら見てもキャッシュの動きは全く分からない。キャッシュの動きが知りたければ、キャッシュの動きそのものを直接見るしかない。そのための手段がキャッシュ・フロー計算書なのである。

「キャッシュ・フロー計算書を見ると何が分かるんですか?」と聞かれることがあるが、それに対しては「キャッシュの動きに関する情報です」としか答えようがない。それ以上の何か特別なことが分かるわけではない。重要なのは、「(多くの人が最重要視する)損益計算書を見てもキャッシュの動きは何も分からない」ということなのだ。